産業連関表とは、経済活動に係る財・サービスの産業相互間の取引の状況を行列(マトリックス)形式の一覧表にまとめた統計表です。GDP などの指標に代表される国民経済計算では、付加価値の「生産・分配・支出」に着目しているのに対して、産業連関表では、中間生産物を含んだ生産活動の全体構造(中間取引、付加価値および最終需要)を明らかにしているところに特徴があります。
産業連関表では、その内容により経済取引の実態(経済の規模、産業間のつながり、構造)を明らかにする統計表となっており、表から導かれる投入係数などの各種係数を用いることにより、経済の将来予測や行政施策等の経済波及効果の測定が可能となります。
本市の産業連関表作成の特徴は、本市の特徴が表れると想定される第3次産業を細分化し、サービス業を緻密に分析できるよう93部門に分類し、本市の実態を把握するため市内事業所へアンケート・ヒアリング調査を実施し、連関表へ反映させています。
2015年 那覇市産業連関表によると、本市に所在する事業所による生産活動及び取引の総額を示した市内生産額は2兆1,795 億円で、県内総生産の35%を占めています。また、原材料やサービス等の購入額である「中間投入額」は8,913億円で、市内生産額の40.9%と推計されます。
市内生産額から中間投入額を差し引いた残りが粗付加価値であり、1兆2,883億円と市内生産額の59.1%と推計されます。
市際収⽀(移輸出-移輸入)は448億円と、移輸入超過となっていますが、本市は那覇空港を有するため航空輸送の稼ぐ力が大きく、県庁所在地の性格上、金融や行政、情報、出版サービス等を移出し、且つ人口集積により生産効率性が高いため、沖縄県全体と比較し赤字の割合は小さくなっています。
ここでは、那覇市産業連関表93部門のうち、本市における「稼ぐ力」筆頭産業である「航空輸送」分野の財・サービスの流れについて紹介します。
まずは、同分野における「財・サービスの販売先」(需要)の側面から見ていきます。産業連関表にもとづく「航空輸送」分野の連関フロー図によると、市内での総需要(供給)① 2,254億円のうち、移輸出された需要(市外からの所得獲得)は② 2,178億円となっています。(左下図:「航空輸送」の財・サービスの流れ 参照)これは総需要額の約96%を域外から獲得していることになり、市域外マネー獲得率の高い分野であることが見てとれます。
次に、「財・サービスの購入元」(供給)の側面から、費用構成(どこからどれだけ買ったか)に注目します。
「市内生産額」③ 2,202億円のうち、原材料部分である中間投入額は④ 1,428億円、生産活動によって生み出された付加価値である粗付加価値額は774億円となっています。
市内で生産した財・サービスの販売先のほとんどが市域外である一方で、市内で財・サービスを生産する過程において発生する、中間投入額の移輸入額は⑤ 888億円と、⑥ 約62%の消費が市域外へと流出しているのが現状です。(右下図:中間投入の域外からの調達額が大きい産業上位20 位 参照)
さらに中間投入の内、「航空機・同修理」については、市内自給率0%(移輸入率100%)で、原材料部分を域外からの移輸入でまかなっている状況にあります。
地域経済の稼ぐ力を高めるためには、これまで域外から移輸入していた原材料を、できる限り市域内で調達し、市内消費を増加させることが重要です。そのため、市域内での原材料調達率の増加に向けた取り組みが求められています。
2018年11月、沖縄県が整備を進めてきた航空機整備施設が那覇空港内に完成し、それに伴い、2019年1月より機体整備事業を担うMRO Japan 株式会社が操業を開始しました。また、那覇空港第二滑走路の増設により、更なる入域観光客数や航空機分野における需要の増加が期待されています。
今後、本県における航空整備事業(MRO事業)の展開により、航空機体整備から派生して、機体部材の製造・補修、部品の保管配送、研究開発、人材の育成など、様々な需要が見込まれる中、「航空機・同修理」分野における域内調達率の向上、ひいては本市・本県における「稼ぐ力」の増々の高まりへと期待が寄せられいます。